じ~たいさくほんぶ。
11月1日、前日の騒々しさが嘘のように静かな朝の風景。各々がちょっぴり寂しい気持ちを胸に抱えながら、望たちはパーティの後片づけをしていた。
「ところで、気になっていたんですけれど」
「んー?」
テーブルの上の食器を纏めていたベルガモットが、すでにソファーに寝そべりサボり気味のクイーンに尋ねた。
「やきもちとか、妬かなかったのですか?」
「誰に?」
「ハロウィンさんに」
妬くわけないじゃん!と身を起こしたクイーンの頬は心なしかほんの少し紅い。ベルガモットを手伝いに来た望がクイーンのその表情を見て、少し意地悪く笑う。
「その顔は、妬いてたわね?」
「妬いてないもん」
「妬いてましたわね」
「妬いてないってば!」
「今ホークさん近くにいませんから」
普段クイーンにいわゆる恋バナでからかわれている二人は、仕返しとばかりにクイーンに詰め寄る。
「……ぜ、全然妬かなかったわけ、じゃ、ないけど」
圧し負けたクイーンは頬を膨らませてぶつぶつと呟いた。
「やっぱり!」
「たださ、あの子がこっちにいられるのは"ハロウィン"限定だから、その間なら別に、いっかなって思って!」
ぶう、と2人の目を見ず拗ねるクイーンの様子に2人は思わず笑みを浮かべる。
「思ったより優しい理由ね」
「思ったよりってなによー!」
3人で談笑していると、おおいとホークがぐったりした声で呼びかけながら入ってきた。珍しく二日酔いしているらしく、頭を押さえ少し苦しそうだ。
「望、仕事あるか?」
「あるにはあるけど、大丈夫?無理しないでいいのよ?」
「いや、やるよ。――皿洗いがまだか?」
「ええ」
ホークは一つ欠伸をして、コップに水道水を入れ飲み干した。
「洗うから、そっちの皿こっちに持ってきてくれ」
「ピィー!」
「ピィー!」
「……あ?」
女性陣の誰でもない、まるで鳥の鳴き声のような声に驚き、ホークは視線を移す。流しには次々に皿が運ばれてくる。宙をふわふわ漂う皿たちは、見覚えのある白いお化けたちに運ばれている。
「カラスさん、何してるのかはわからないけどお手伝いするわ♡」
ホークの傍らに突如現れたゴシック衣装の少女は紛れもなくハロウィンだ。
「ええええええ!」
女性陣も思わず声を上げていた。なんだなんだとゴミを出しにリビングを外していたメンバーも戻ってくる。
「お、おまえ!"ハロウィン"は終わっただろっ!」
ハロウィンはふふん、と自慢げに笑った。
「ワタクシの予想以上に今年は力が戻っていてね、少しだけ夜更かしできるようになったのよ。貴方とのパーティ、まだ間に合うわよね?」
ハロウィンはホークの腕を抱きながら嬉しそうに話す。
「このまま力が戻っていけば、きっと"ハロウィン"まで眠らなくてもよくなるわ!そうなれば今度こそずっと一緒よ、カラスさん♡」
「おい、カラス野郎こいつどうにかしてくれよ、全然寝る気ないんだぜ。俺も眠いよ」
相当疲れ果てた様子のジャックもハロウィンの傍らに現れる。
ホークは動揺と二日酔いとで顔が青ざめ笑顔はひきつっていた。そんなことはお構いなしに、ハロウィンはホークの腕を振り回す。
「――と、言うことらしいけど」
「どうなさるんです?クイーンさん」
「うぐぐぐ……」
望とベルガモットが視線を送ると、クイーンは顔を真っ赤にして呻いていた。恥ずかしい気持ちと、自分が年下に嫉妬している事実の間で葛藤しているらしい。
「もぉー!それあたしのぱしりなのー!」
やけっぱちのクイーンの叫びに、どっと全員が笑う。リビングはいつの間にか昨夜のような賑やかさを取り戻していた。
おしまい。